夕映え34

誤解?

はい。僕と文乃さんは、お父さんが思っておられるような関係では

お義父さん?ここには私しかいないはずだが

志摩さんが思っておられるような関係じゃありません!

もうやだ帰りたい!

ふむ、だったらどうして君はここにいるんだ?

そ、それは文乃さんが傷の手当てをしてくれると言って

その件についてはきちんと謝罪したはずだ

きちんとはされていない。要約するとうちの猫、グッジョブ!という内容だった。

私が聞いているのはね、そもそも君が屋敷の前にいたということは、娘を家まで送りにきたということだろう

偶然です。たまたま帰り道が一緒になって

でも、君、うちの娘のこと好きだろ?

えっ

違うの?

おかしいぞ、本人より先に父親に告白する流れになっている。

では、尋ね方を変えよう。こうして家に上がり込むだけでは飽き足らず、父である私の目の前で娘と手まで繋いだ君が、すでに何度も私の神経を逆撫でしている君がだ、もしうちの娘に惚れてないと答えたら私はその瞬間こそ鬼になろう

惚れてます!

よろしい。生きて帰れると思うな

あれっ!?

どっちにしても鬼ルートだ!

そのとき、天の助けのようにふすまが開いた。

何してるんです、お父さん

凄まじい冷気をともなって、志摩が立っていた。

秋くんを不快な目に遭わせたら、いくらお父さんといえど容赦しませんよ

志摩父は芝居がかった仕草で両手を挙げた。

怖い怖い。うちのお姫様はこれだから

はーい、もう口利きませーん

ぐっ!

うめき声を洩らし、志摩父は押し黙った。娘に口を利いてもらえなくなるのはそんなに嫌なことなのか。

秋くん、お待たせしました。玄関までご案内します

すると、志摩父がすばやく立ち上がった。

文、お前はここにいなさい。外はもう暗い。ここは私が

お父さんひとりの見送りなんてどんな罰ゲームですか。要りません

きっぱりと言い放ち、志摩が俺の手首を掴んだ。

バタバタとごめんなさいね。行きましょう、秋くん

えっ、う、うん

俺は振り返り、お邪魔しましたと志摩父に頭を下げた。

志摩父はムンクの叫びみたいな顔をしていた。

二度も手を繋いだな!?二度も!パパの目の前で男と手を繋ぐなど許さんぞ、文っ!

父親の絶叫を聞き流し、志摩は茶の間を出た。

つづく

夕映え35

夕映え1

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